睡眠時無呼吸症候群
自宅でも出来る簡単検査!
従来、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断には、病院などに検査入院させて睡眠ポリソムノグラフィ(PSG)などの大掛かりな検査機器を取り付けて寝てもらうなどしていますが、この方法では普段と環境が違う事から被検査者が熟睡できず、正確なデータが得られない等の弊害が指摘されています。
当医院では、モルフェウスという小型の検査機器を使用し検査しますので、自宅でいつも通りのリラックスした状態で測定できます。(勿論、医院内での検査も出来ます)
自宅または医院で検査に使用するのは簡易型の機械でモルフェウスといいます。
これを自宅で寝る前、もしくは医院でつけていただき、翌朝外すという検査方法です。
そのあと医院で解析し、診断基準であればCPAP導入、しかし診断基準未満ではあるが怪しい場合は再度検査。
またはお近くの病院の耳鼻科に依頼し精査していただきます。
自宅で導入した被検査者には以降1ヶ月に1回の割合で受診していただきフォローいたします。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群は読んで字のごとく「睡眠時」に「無呼吸」状態になる病気です。
英語ではSleep Apnea Syndrome(SAS)と書きます。
「無呼吸」とは10秒以上の呼吸停止と定義され、睡眠1時間に10秒以上持続する無呼吸・低呼吸指数(AHI)が5以上かつ日中過眠もしくは閉塞型無呼吸に起因するさまざまな症候をともなうとなっています。
「無呼吸=息が出来ない」ので死んでしまうのではないか?と思われがちですが、実は、この無呼吸自体で、死んでしまうことはありません。
むしろ、無呼吸がつづくことで体に負荷がかかり生活習慣病(高血圧や心疾患など)になることや、記憶に新しい新幹線のオーバーラン事件に代表される、昼間の眠気による事故(交通事故、労災事故)に関係するため、ご本人だけでなく社会的にも問題となるのです。
怖いことを書きましたが、SASはしっかり治療すると無呼吸がなくなり生活習慣病や眠気などの症状もきちんとコントロールできます。この疾患はなにも特殊な疾患ではありません。
有病率は人口の4%と言われており、日本には200万人いると言われています。
しかし、なかなか気がつきにくい、いびきをかく程度で受診するなんて恥ずかしいと言う理由などで、まだまだ治療を受けている方が少ないのが現状です。
生活習慣病と交通事故
アメリカで行われた研究で驚くべきデータが出ています。
1時間当たりの無呼吸数が20回以上の重症の方は、無治療のままで放置すると9年後には心臓病、脳卒中、交通事故などの原因で10人に4人お亡くなりになっていたというのです。
軽症の方と比較してもその差は歴然です。
また、近年、アメリカで行われているSASと生活習慣病の研究調査によると、正常な方と比較して、SAS患者さんは、高血圧は2倍、心疾患3倍、脳卒中は4倍、糖尿病は1.5倍発症する可能性があがるといわれています。
交通事故については、飲酒している人より重症のSAS患者さんのほうのハンドル操作ミスが多いというショッキングなデータもあります。
日本でも平成13年度の道路交通法改正で、眠気を訴える疾患に罹患していて、治療を受けていない方には運転免許の発行、更新をしないことになりました。
CPAP療法などの適切な治療をすれば、これら症状はコントロールできます。
快適な生活を送るためにも適切な治療をうけましょう。
簡単自己診断(日中過眠の評価)
エプワース眠気尺度を使って8項目について質問に答えることにより自己診断することができます。
8項目についてそれぞれ…
0:眠ってしまうことはない
1:時に眠ってしまう(軽度)
2:しばしば眠ってしまう(中等度)
3:ほとんど眠ってしまう(高度)
という3段階の評価です。
8項目中11点以上で日中過眠(+)、5~10点以下を日中過眠(+-)、5点以下を日中過眠(-)としています。
また5点以下でも睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は専門医の診断を受けましよう。
エプワース眠気尺度 |
1 |
座位で読書中 |
0・1・2・3 |
2 |
テレビを見ている時 |
0・1・2・3 |
3 |
会議、劇場などで積極的に発言などをせずに座っている時 |
0・1・2・3 |
4 |
乗客として 1時間続けて車に乗っている時 |
0・1・2・3 |
5 |
午後に横になることがあるとすれば、その時 |
0・1・2・3 |
6 |
座位で人と話をしている時 |
0・1・2・3 |
7 |
アルコールを飲まずに昼食をとった後に、静かに座っている時 |
0・1・2・3 |
8 |
自動車を運転中に信号などにより数分間止まった時 |
0・1・2・3 |
無呼吸症候群の治療方法
1、鼻マスク持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)
無呼吸症候群が中等から重症のかたは有効です。
睡眠中に鼻にマスクをつけて器械で一定の圧をかけ、上気道がふさがらないようにするのです。
健康な人では苦痛に感じてしまいそうですが、無呼吸症候群の方には快適な睡眠をもたらすので、喜ばれます。
自宅で毎晩、基本的に長期間、行ないます。
CPAP療法は81年に閉塞型睡眠時無呼吸症候群の治療に導入され、症状が劇的に改善することがわかりました。
治療効果として、無呼吸・低呼吸・いびきがなくなり、睡眠の質が向上するので、日中の眠気もとれ、高血圧や狭心症などの合併症も改善します。
副作用は、マスクによる皮膚のかぶれや口の乾燥などがあります。98年から健康保険の適応になりました。
2、マウスピースや手術の方法
歯科装具(マウスピース)をつくり、上下の歯の間に固定し、下あごを少し前に突き出すようにするのも有効で、軽症から中等症の無呼吸症候群の方にはすすめています。
そのほかに、耳鼻科的に手術をして上気道を広げる方法(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)もあります。
3、生活習慣の改善
生活習慣の改善も大切です。
肥満の方は、食事・運動療法により、余分な脂肪をとりのぞき、体重をおとすことが大切です。また飲酒や睡眠薬は上気道の筋力を低下させ、閉塞を悪化させるので、制限が必要です。
一般的には、年齢を重ねるに従って、睡眠時無呼吸は悪化することが多いので、高血圧や糖尿病と同じように治療を続けることが大切です。
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